コミュニケーションの「豊かさ」とは

  

今回から、現在の組織内コミュニケーションについて、さまざまな視点から考えてみたい。
今回は、コミュニケーションの「豊かさ」について採り上げる。

 

組織内のコミュニケーションには、さまざまなメディアが介在する。
紙、Web、イベントや会議体などのリアルな場。コミュニケーションの目的や対象に応じ、現在それぞれ多様な活用がみられる。
近年、その手軽さからWebに手段が偏りがちだが、コミュニケーションの質をどう考えていけばいいのか、判断に迷うことが少なくない。
別の見方をすると、コミュニケーションの「豊かさ」をどう受け止めていけばよいのか、だとも言える。単純に、コミュニケーションは、いつもできる限り豊かであれば良いのだろうか。

 

アメリカのメディア学者ダフトらは、1980年代に次のような実験を行った。ある組織において、コミュニケーション手段の違いにより、多義的な内容がどの程度正確に伝えられるかを検討したものだ。
その結果、
ビラ<メモ<ノート<手紙<電子メール<電話<対面
という順位で、伝えようとする多義性のある情報やその意味が正しく伝えられるという極めて常識的な結果が導かれた。
主に手がかりの多さとフィードバックの迅速さが影響しており、それを「リッチネス(richness、豊かさ)」と定義した。
つまり、手がかりの多さとフィードバックの迅速さを「豊かさ」と位置づけたわけである。

 

この結果は、意外と奥が深い。
たとえば、組織がうまくいかないとき、組織の問題点について率直な意見を集めようとする場合を考えてみる。
対面で個別に意見を聞いてみたとき、個人の詳しい事情がつかめても、相手との関係を意識しすぎて、どこまで本音が得られるかわからないことも多い。
一方、匿名によりできるだけ簡単な方法で、自由に意見を出してもらうように求めたとき、逆に本音が出しやすくなり、組織のさまざまな問題点が見えてくることもある。ちょうど、企業不祥事に絡む内部通報制度の仕組みをイメージするとわかりやすいだろう。

 

このことは、コミュニケーションの目的に応じ「手がかり」「フィードバック」を調整することで、コミュニケーション効果を変化させることができることを示唆している。
「豊かさ」を「手がかり」「フィードバック」と捉え、それらをどの程度、組織として共有したり、交換したりしたいのかを考えることにより、コミュニケーションの考え方、手段がすんなり見えてくることがある。

 

さて、あなたの職場では、コミュニケーションの「豊かさ」がうまく調整され、適切な手段により展開されているだろうか。ふと足を止めて考えてみてほしい。