「学び」はコミュニケーションである(8)

  

今回は、学びの前提となる組織のあり方について、少し考えてみたい。
前回紹介した『「学び」で組織は成長する』(吉田新一郎著、光文社新書、
2006/01)に、「どんなときによく学べるか?」といった著者なりのまとめ
が、以下のように掲載されている(p.205)。
・信頼され、受け入れられ、期待されていると、よく学べる。
・いいサポートやフィードバックがあると、よく学べる。
・自分の学びにうまくマッチすると、よく学べる。
・自分にとって心地よい空間にいることでよく学べる。
・自分の気持ちや考えを素直に出せるときによく学べる。
・自分の選択した内容や方法で学べるときによく学べる。
・目標を明確にすることでよく学べる。
・自分のニーズを満たす形で学ぶ。
・自分の好奇心や関心やこだわりを通して学ぶ。
・考え甲斐のあるテーマや問題に巡り合えるとよく学べる。
・必要に迫られることで学ぶ。
・自分にとって意味のあることや役立つことを通して学ぶ。
・自分で考えることで学ぶ。
・新しいものに挑戦できると学ぶ。
・振り返ることで学ぶ。(→分析することで学ぶ)
・話し合ったり、議論することで学ぶ。
・書く・読むことで学ぶ。
・追いつめられると(〆切が迫ると)学ぶ。
・いい情報に出合うことで学ぶ。
・他の人たちの学びを手助けをすることで学ぶ。(→教えることで学ぶ)
・仕事を任されることで学ぶ。
・周りの人に刺激されることでよく学ぶ。
・真似ることで学ぶ。(→真似たいと思う対象を見つけることでよく学べる)
・あこがれを持つことで学ぶ。
・成功したとき、結果が出たときに学ぶ。
・研修などでは講師よりも仲間からより多くを学ぶ。
・実際に試してみることで学ぶ。
・おもしろさを感じるとよく学べる。
・疑問を感じると学ぶ。
・遊んでいるときのように我を忘れて打ち込めているときによく学べる。
・さまざまな活動や方法を組み合わせる形でよく学べる。
・失敗から学ぶ。
・疑うことで学ぶ。
・決まりごとを打ち破ることで学ぶ。
以上、34件あるが、いくつかはダブっているので、多少集約できるだろう。
ざーっとみてみると、学びの多様さ、日常そのものの中にこそ学びがある
ことが良くわかる。
学びと組織との関係を改めて考えたとき、いくつかの原則がイメージできる。

1.立場を超えて誰もが「不完全」ゆえに、それぞれの立場においてテーマが
ある。

2.組織の中での基本は「教え-学ぶ」関係であり、それは双方にとって両義性
をもつ。つまり、教えているつもりが知らず知らず相手から学んでいる。

3.学びの関係は、以上を踏まえると、ピラミッドのような階層構造ではなく、
できるだけフラットで、ネットワーク的な関係となる。

4.学びには、ロールモデルが求められ、学びの関係の広がりとともに伝播し
ていく。

5.学びには、場、雰囲気、つまり学ぶ環境が大切である。
かなり抽象的になってしまったが、このような原則的な視点から組織の関係の
あり方を改めて眺めてみると、さまざまな課題に気づくのでないだろうか。
著者は「学ぶこと自体は、特殊な技術というよりも、人が息を吸ったり、吐い
たりするのと同じレベルで、生きていくために不可欠な極めて当たり前にして
いる行為と理解できる」と述べている。

学びは、日々のコミュニケーションの中に内在し組織風土を形作る。学びを見
れば、コミュニケーションによる関係性が浮かび上がり、組織風土のありよう
が見えてくる。このことは、ある意味で当たり前のことなのではないだろうか。
それぞれ、自らを振り返りつつ考えてみてほしい視点である。