「学び」はコミュニケーションである(9)

  

このシリーズもそろそろ区切りがつきそうである。あと2回ぐらい
だろうか。今回は、学びを支える組織風土について考えていきたい。
 

前回の学びと組織の関係の原則に即していえば、学べる関係として
組織を眺めたとき、どのような立場であれ、それぞれの「不完全さ」
を埋めるテーマがあり、それが関係をつなぐことに結びついていく。
そして、そのような関係性はピラミッドではなく、よりフラットで
ネットワーク的な関係といえるだろう。
そしてネットワーク的な関係の中でも、誰と、どのような相手とネッ
トワークを築くかが、結構大きな意味を持ってくる。
その中でも最近「ちょっと離れた部門の先輩」のような関係の意味に
ついて、少し気になっている。

 
組織間関係論の専門家である西口敏宏氏は『遠距離交際と近所づきあい』
という著書のはしがきで次のようことを述べている。
「社会システムの新陳代謝を促す原動力の1つは、あなたを取り巻く
「直近の」ネットワークと、ふだんは意識せず接触も少ない「遠い」
ネットワークの間に、思いきって少数のバイパス(迂回路)を設けること
で、どっと流れてくる「新鮮な情報」である。だが、遠くからの情報量
が過剰でも、また、それを受け取るあなたとその周囲の者との関係が
疎遠すぎても、情報は活きない。どこかで途絶えてしまう。つまり、
遠距離交際と近所づきあいの、微妙なバランスが大切なのだ。」

 
単純化していえば、ある組織において担当部門の上司と部下、同僚と
いったような日常的な人間関係が「近所づきあい」だとすれば「ちょ
っと離れた部門の先輩」のような非日常の関係は「遠距離交際」と
いえるのではないだろうか。
そして、自分なりにその存在の意味について次のように考えている。

 

まず、利害関係が薄いことにより、ストレートな関係が作りやすい。
また、普段とらわれがちな視点ではなく、異質な視点に気づきやす
くなる。それは、自分のことを新たに捉えなおすことにもつながる。
そして、その相手が魅力的な存在であれば、自分の将来のロールモデ
ルになるかもしれない。
このように、日常ではなかなか得られない「学び」が期待できるのが、
「ちょっと離れた部門の先輩」のように思う。
ただ、このような関係が作りやすい風土がその組織にどれだけあるの
か、そして「近所づきあい」の関係がそこそこ良好であることが、
このような関係を活かすことである点を忘れてはいけない。要は、
何事もバランスなのである。

 
「ちょっと離れた部門の先輩」のような関係を作りやすい仕組みとして、
たとえば、再評価されつつある「独身寮」や企業内クラブ活動なども
上記の視点から改めてみてみると価値がより高まるような気がする。
インフォーマルなものでなくても、さまざまな横断的なプロジェクトが
同様な関係づくりに役立つかもしれない。それぞれ考えてみてほしい。